【ベトナム現地化コラム】なぜベトナム人社員は「言い訳」から入るのか?「他責」を「自責」に変える問題解決アプローチ

06-16-2026

 

現場で多発する「言い訳」の壁

ベトナムの現場でトラブルやミスが発生した際、ベトナム人社員を注意すると、謝るよりも先に「でも、〇〇部門が遅れたから」「システムが悪かったから」と、延々と「言い訳」から入られてウンザリした経験はありませんか?なぜ彼らは、素直に自分の非を認めないのでしょうか。

謎を解く鍵は「スジ(後払い)」と「量(先払い)」の評価ギャップ

この行動の背景には、「面子」へのこだわりに加え、日本人とベトナム人の間にある「評価」に対する根深いすれ違いがあります。

  • 日本人の思考:「スジ」と「評価の後払い」
    日本企業は「失敗したら素直に非を認め、まずは下積みで実力をつけろ。評価は後からついてくる(後払い)」という「スジ」の思考を重んじます。この考え方では「完璧さへの道のり」が重視され、現在地での評価は二の次です。
  • ベトナム人の思考:「量(面子)」と「評価の先払い」
    彼らにとって重要なのは「自分が他者より優れている」という「量(面子)」です。そして、働くモチベーションの源泉は「自分を先に高く評価し、尊重してくれれば、それに見合って一生懸命働く(先払い)」という思考にあります。これは儒教的階級社会の文化背景に根ざしており、上司からの「評価と尊厳」がなければ、モチベーションは生まれません。

そのため、ミスが起きた時に日本式に「言い訳をするな、君の責任だろう」と正論で論破しようとすると、彼らは面子を完全に潰されたと感じるだけでなく、「自分は会社から不当に低く評価された」と心を閉ざし、自己防衛のためにさらに強固な他責(言い訳)に走ってしまうのです。

【卸売業・A社様事例】「人」ではなく「事」を責める仕組み

では、どうすれば彼らを「自責」に変えることができるのでしょうか。

卸売業のA社様の現場では、納品時の商品欠陥トラブルや債権回収の遅延といった問題が発生した際、部門間での面子の潰し合い(言い訳)が起きていました。

A社様で実施した研修では、いきなり「誰が悪いのか(Who)」を追及するのではなく、日常業務のイライラを題材に「感情で判断する罠」を体験させた上で、問題を客観的に評価する3つのモノサシ(重要度、緊急度、拡大傾向)を導入しました。

そして、個人のミスとして片付けるのではなく、各部門間の連携プロセスで分解し、「プロセスのどこに問題があるか(Where)」を「数字と事実(FACT)」だけで語るルールを徹底したのです。

ここが重要です。このFACTベースの議論は、実は最高の『評価の先払い』になっているのです。なぜなら、個人の感情や人格ではなく「プロセス」を対象に議論することで、「あなたたちの能力と誠意を信頼している。一緒に解決しよう」というメッセージが自動的に伝わるからです。

「評価・尊重されている」という安心感が「自責」を生む

客観的な「事(プロセスや数字)」を議論の対象にすれば、個人の面子への攻撃にはなりません。むしろ、「自分たちの現場の声をしっかり傾聴し、客観的に評価してくれている」という「尊重(評価の先払い)」を感じることで、ベトナム人マネージャーたちは驚くほど素直に問題に向き合い始めます。

A社様では、この「尊重の姿勢」を意図的に複数の場面で組み込みました:

  • 部下の意見を積極的に聞く — 定例会で「お前たちはどう思う?」と部門ごとに提案を求める
  • 成果を公開で褒める — 改善に貢献した個人名と成果を全社メール共有で紹介
  • マネージャー自身を信頼する — 経営層が「君たちなら解決できる」というメッセージを繰り返す

面子が脅かされず、正当に評価されていると安心した彼らは、言い訳をやめ、「自分たちが解決すべき課題(自責)」として、会社全体の収益を守るためのプロセス改善に知恵を出し始めました。

「評価の先払い」が生む返報心理

「言い訳(感情・他責)」のぶつかり合いを回避し、「事実(FACT・自責)」を共通言語にする。そして、彼らを正当に評価し尊重する姿勢を見せる。
この2つが揃った時、ベトナム人社員は驚くほど主体的に動き始めます。なぜなら、「評価の先払い」を受け取った彼らは、心理学でいう『返報性の原理』に基づいて、それに見合う行動で返報しようとするからです。

つまり、「この会社は自分を信頼し、評価してくれている」という実感が、「だから自分も本気で動こう」という当事者意識に変わるのです。
これが、トラブルの根本解決を担う次世代リーダー育成の第一歩です。
ベトナム現地化を本気で進めたい経営者の皆様、GOENが伴走パートナーとして一緒に考えさせていただきます。