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「私がいなくなったら、この会社どうなるんだろう」
帰任まであと3ヶ月。B社の工場長・田中さん(仮名)は、毎晩この問いが頭から離れなかったと言います。
後任の駐在員は来ない。本社からは「現地で回してくれ」の一言。でも、ベトナム人マネージャーのフォンさん(仮名)は優秀だけど、いつも「田中さん、どうしますか?」と聞いてくる——。
「任せているつもりだった。でも、任せていなかったんです」
B社が「駐在員ゼロでも回る組織」をつくるまでの、1年間の記録です。
「任せているようで、任せていない」という構造
「フォンさんには権限を渡しています。彼女が決めていいんです」と田中さん。しかし、隣にいたフォンさんはこう言いました。
「でも、最終的には田中さんに確認しないと不安で…。もし間違っていたら、日本本社に迷惑がかかりますから」
これが、多くの日系企業で起きている「現地化の壁」の正体です。権限は渡した。でも「判断の基準」は渡していない。だからベトナム人マネージャーは「確認」を繰り返す。駐在員は「なぜ自分で決めないんだ」とイライラする。
GOENではこれを「任せているようで任せていない状態」と呼んでいます。これは人の問題ではなく、構造の問題です。
「何を見て判断するか」を言語化する
B社でまず取り組んだのは、「判断基準の見える化」でした。
田中さんの頭の中にある「こういう時はこう判断する」という暗黙知を、フォンさんと一緒に言葉にしていく作業です。
例えば、納期遅延のリスクが出たとき。田中さんは無意識に「顧客への影響度」「代替手段の有無」「コスト増加幅」の3点で判断していました。でも、それを言葉にしたことはなかった。
「これを先に教えてもらっていたら、私ももっと早く決められたのに」——フォンさんの一言に、田中さんは黙り込みました。
GOENの現地化支援では、この「判断基準の言語化」を徹底します。ベトナムの現場では「量のOS」——目の前の現実・損益・影響の大きさで判断する思考が強い傾向があります。そこに「何を優先するか」の軸を渡すことで、自律的な判断が可能になるのです。
「私がいなくても回る」状態をつくる3つのステップ
ステップ1:判断基準の棚卸し(1ヶ月目)
田中さんが日々行っている判断を記録し、「なぜその判断をしたか」をフォンさんと一緒に言語化。これを「判断マップ」として整理しました。
ステップ2:段階的な権限移譲(2〜4ヶ月目)
最初は「田中さんに報告してから実行」、次に「実行してから報告」、最後に「報告不要」と段階を分けて移譲。フォンさんが自分の判断に自信を持てるよう、成功体験を積み重ねました。
ステップ3:振り返りの仕組み化(5ヶ月目以降)
週1回、フォンさんが「今週の判断」を田中さんにプレゼン。田中さんは「自分ならこう考える」をフィードバック。これを帰任後も、オンラインで継続できる形に設計しました。
田中さんの帰任から半年。B社の工場は、フォンさんをリーダーとするベトナム人チームで回っています。「駐在員がいないと回らない」という前提を、B社は自ら書き換えました。
よくある質問
Q1. ベトナム人マネージャーに判断を任せると、日本本社の方針とズレませんか?
A1. 「任せる」の前に「判断基準を共有する」ステップを入れることで、方針のズレを防げます。B社では、本社の方針を「こういう場面ではこう判断する」という具体例に落とし込み、フォンさんと共有しました。
Q2. 現地化に取り組む時間がありません。駐在員は日々の業務で手一杯です。
A2. だからこそ、帰任の1年前から準備を始めることをお勧めしています。B社も最初は「そんな時間ない」と言っていましたが、週1回・1時間の「判断の棚卸し」から始めました。小さく始めて、続けることが大切です。
GOENでは、在越日系企業の人材育成・現地化推進を専門にサポートしています。「うちの現場を見てほしい」「まず話だけ聞きたい」——どちらでも大歓迎です。まずは無料相談からどうぞ。