【ベトナム現地化コラム】駐在員ゼロでも回る組織へ|B社の現地化戦略

07-18-2026

「私がいなくなったら、この会社どうなるんだろう」

帰任まであと3ヶ月。B社の工場長・田中さん(仮名)は、毎晩この問いが頭から離れなかったと言います。

後任の駐在員は来ない。本社からは「現地で回してくれ」の一言。でも、ベトナム人マネージャーのフォンさん(仮名)は優秀だけど、いつも「田中さん、どうしますか?」と聞いてくる——。

「任せているつもりだった。でも、任せていなかったんです」

B社が「駐在員ゼロでも回る組織」をつくるまでの、1年間の記録です。

「任せているようで、任せていない」という構造

田中さんとの初回ヒアリングで、印象的な場面がありました。

「フォンさんには権限を渡しています。彼女が決めていいんです」と田中さん。しかし、隣にいたフォンさんはこう言いました。

「でも、最終的には田中さんに確認しないと不安で…。もし間違っていたら、日本本社に迷惑がかかりますから」

これが、多くの日系企業で起きている「現地化の壁」の正体です。権限は渡した。でも「判断の基準」は渡していない。だからベトナム人マネージャーは「確認」を繰り返す。駐在員は「なぜ自分で決めないんだ」とイライラする。

GOENではこれを「任せているようで任せていない状態」と呼んでいます。これは人の問題ではなく、構造の問題です。

「何を見て判断するか」を言語化する

B社でまず取り組んだのは、「判断基準の見える化」でした。

田中さんの頭の中にある「こういう時はこう判断する」という暗黙知を、フォンさんと一緒に言葉にしていく作業です。

例えば、納期遅延のリスクが出たとき。田中さんは無意識に「顧客への影響度」「代替手段の有無」「コスト増加幅」の3点で判断していました。でも、それを言葉にしたことはなかった。

「これを先に教えてもらっていたら、私ももっと早く決められたのに」——フォンさんの一言に、田中さんは黙り込みました。

GOENの現地化支援では、この「判断基準の言語化」を徹底します。ベトナムの現場では「量のOS」——目の前の現実・損益・影響の大きさで判断する思考が強い傾向があります。そこに「何を優先するか」の軸を渡すことで、自律的な判断が可能になるのです。

「私がいなくても回る」状態をつくる3つのステップ

B社で実施した現地化プロセスは、大きく3つのステップでした。

ステップ1:判断基準の棚卸し(1ヶ月目)

田中さんが日々行っている判断を記録し、「なぜその判断をしたか」をフォンさんと一緒に言語化。これを「判断マップ」として整理しました。

ステップ2:段階的な権限移譲(2〜4ヶ月目)

最初は「田中さんに報告してから実行」、次に「実行してから報告」、最後に「報告不要」と段階を分けて移譲。フォンさんが自分の判断に自信を持てるよう、成功体験を積み重ねました。

ステップ3:振り返りの仕組み化(5ヶ月目以降)

週1回、フォンさんが「今週の判断」を田中さんにプレゼン。田中さんは「自分ならこう考える」をフィードバック。これを帰任後も、オンラインで継続できる形に設計しました。

田中さんの帰任から半年。B社の工場は、フォンさんをリーダーとするベトナム人チームで回っています。「駐在員がいないと回らない」という前提を、B社は自ら書き換えました。

よくある質問

Q1. ベトナム人マネージャーに判断を任せると、日本本社の方針とズレませんか?

A1. 「任せる」の前に「判断基準を共有する」ステップを入れることで、方針のズレを防げます。B社では、本社の方針を「こういう場面ではこう判断する」という具体例に落とし込み、フォンさんと共有しました。

Q2. 現地化に取り組む時間がありません。駐在員は日々の業務で手一杯です。

A2. だからこそ、帰任の1年前から準備を始めることをお勧めしています。B社も最初は「そんな時間ない」と言っていましたが、週1回・1時間の「判断の棚卸し」から始めました。小さく始めて、続けることが大切です。


GOENでは、在越日系企業の人材育成・現地化推進を専門にサポートしています。「うちの現場を見てほしい」「まず話だけ聞きたい」——どちらでも大歓迎です。まずは無料相談からどうぞ。

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