ベトナム現地化経営コラム:目標を「翻訳」しないと動かない

08-18-2025

数字だけでは動かないベトナム人マネージャー

日本人駐在員は、目標を立てるときに売上や利益率などの数値目標を示すことが多いです。しかしベトナム人マネージャーの中には、その数字がなぜ必要なのか、どう自分の業務とつながるのかが理解できないまま受け取ってしまう人が少なくありません。結果、「指示された数字を追う」だけの表面的な行動になり、組織の成長につながらないケースが目立ちます。

目標は「翻訳」して届ける

ここで必要なのが、目標の“翻訳”です。これは単なる言語翻訳ではなく、「その数字が組織全体にどんな意味を持つのか」「自部署ではどう行動すれば達成できるのか」を現地スタッフの視座・視野・視点に合わせて解きほぐすことです。例えば、「売上10%増加」というゴールを、「主要代理店5社の販売力強化」「顧客訪問数の20%増加」といった日々の行動に落とし込むことが翻訳にあたります。

ベトナム人の“量”の思考と日本人の“筋”の思考のギャップ

田中信彦氏『スッキリ中国論』でも触れられているように、アジアの一部文化圏では「とにかく目の前の課題を解決する=量の思考」が強く働きます。ベトナムでも同様に、「言われたことを素早く片付ける」ことに価値を置く傾向があります。一方、日本人マネージャーは「筋道を立てて中長期的な成果を出す=筋の思考」を求めます。このギャップを放置すると、目標は共有されても行動の方向が揃いません。

ゴールを行動言語に変えるのがベトナム駐在員の仕事

現地化とは、現地スタッフが自ら目標を設定し、PDCAを回せる状態を作ることです。そのためには、ゴールを数字だけで示すのではなく、「なぜそのゴールなのか」「何をすれば近づけるのか」を具体的な行動言語にして伝える必要があります。駐在員の役割は、数字を与えることではなく、その数字が現場で“意味のある行動”になるまで翻訳することなのです。