ベトナム現地化経営コラム :人を育てる前に、“役割”をそろえる ― ベトナム人マネージャーに「自分の仕事の定義」を伝える研修 ―

11-06-2025

1. ベトナム人社員教育の第一歩は「役割の再定義」

「うちのマネージャーは、まだ“プレイヤー”として動いている」
ベトナム現地法人の日本人駐在員から、よく聞く言葉です。

これは珍しいことではありません。
多くのベトナム人マネージャーは、昇進後も“自分で動いて成果を出す”スタイルから抜け出せず、
「自分の役割が変わった」という意識転換ができていないのです。

ベトナム人社員教育で最初に行うべきことは、スキル研修ではなく、
「自分の仕事とは何か?」を再定義する機会をつくることです。


2. 階層別研修で“役割”をそろえる意義

階層別研修の本質は、「上司」「リーダー」「メンバー」それぞれが
どの役割を担うのかを明確にすることです。

階層 主な役割 成果の基準
経営層 方向性を決める 組織の持続的成長
マネージャー チームで成果を出す仕組みをつくる チームの成果・改善
リーダー メンバーを支え、現場を動かす チームの安定稼働
スタッフ 指示を理解し、正確に実行する スピード・正確性

このような表を使って研修を行うと、ベトナム人社員は
「自分がどこまで考えるべきか」「どこから上司に相談すべきか」を明確に理解できます。
つまり、“上下関係”ではなく“役割関係”をそろえることが、
組織全体を動かすための前提条件なのです。


3. ベトナム人マネージャー育成に必要な“切り替え”の教育

プレイヤーからマネージャーに昇格するとき、最も難しいのは、
「自分でやった方が早い」という感覚からの脱却です。

ここで有効なのが、“業務の棚卸し”を行う教育です。
具体的には、階層別研修の中で次のような問いを立てます:

「この仕事は“自分がやるべき仕事”ですか?
それとも“任せるべき仕事”ですか?」

この問いを通じて、ベトナム人マネージャーが
“やる仕事”から“動かす仕事”へと意識を転換することができます。
これが、自律型組織への第一歩です。


4. 現地化経営の鍵は、“役割の翻訳者”を育てること

現地化経営の成否を分けるのは、単にベトナム人を登用することではなく、
役割の意味を共有できるマネージャーを育てることです。

役職名の翻訳ではなく、“役割の翻訳”を行う。
たとえば、「マネージャー=管理職」ではなく、
「チームの成果を出す仕組みをつくる人」という共通理解を持つ。
その共有を進めるのが、階層別研修の本当の価値です。