ベトナム現地化経営コラム :「現場が動かない」のはスキルではなく“考える高さ”の違い― 部下育成が機能しない本当の理由 ―

10-30-2025

1. 「研修しても現場が変わらない」のはなぜか

「何度説明しても、部下が自分で動かない。」
そう感じたことはありませんか?
多くの企業で見られるこの現象、原因は“スキル不足”ではなく、考えている高さの違いにあります。

経営層は「全体をどう動かすか」を考え、
マネージャーは「チームをどう回すか」を考え、
現場は「今日の仕事をどう終えるか」を考えている。
それぞれの視点が違うまま、「同じ言葉」で話しているのです。


2. “見ている高さ”が違えば、判断も違う

たとえば、経営が「利益率を上げよう」と言っても、
現場は「売上を伸ばせばいい」と理解してしまう。
「品質を守る」と言えば、“慎重にやること”と捉える人もいれば、“ルールを増やすこと”と考える人もいる。

同じ言葉でも、見ている高さが違えば意味が変わるのです。
このズレを埋めるには、単なるスキル教育ではなく、
「なぜこの判断をするのか」を一緒に考える場が必要です。


3. ミドル層が“翻訳者”になれるかどうか

現場が動くかどうかは、ミドル層にかかっています。
経営の方針をそのまま伝えるだけでは動きません。
ミドルがそれを“自分の言葉”に変換し、現場が理解できる言葉で伝えられるかどうか。

たとえば、「品質重視」を“顧客に信頼される仕組みづくり”と置き換える。
抽象的な言葉を具体的な行動に落とし込める人こそが、組織の翻訳者です。
階層別研修の中心テーマは、この翻訳力の強化です。


4. 「考える高さ」をそろえる対話を

階層別研修は、知識を教える場ではありません。
経営・マネージャー・現場が、それぞれの立場で何を見ているのかを共有し、
“考える高さをそろえる”対話の場にすることが重要です。

経営の意図を理解し、現場が納得して動ける状態――。
それが、本当の意味で「現場が自律的に動く」組織の始まりです。