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1. ベトナム人スタッフが部門を超える問題を日本人へ持ってくる理由
製造業A社(ベトナム拠点)では、日常業務はベトナム人リーダーがしっかり回せています。しかし、部門をまたぐ課題──たとえば「品質と生産の調整が必要」「顧客要求が特殊対応を求める」「納期変更が複数ラインに影響する」などの場面になると、最終的な判断は必ず日本人マネージャーのところへ戻ってくる状態が続いていました。
実際、ベトナム人リーダーは担当部門内の判断には強い一方、
「他部門を巻き込みながら調整し、最終判断する」
というスキルや権限が曖昧なため、
部門間問題=日本人が判断するもの
という“暗黙のルール”が生まれていました。
これは多くの日系企業で見られる典型例です。
2. なぜ“部門横断の判断”はベトナム人ではなく日本人側に集中するのか
文化や性格の問題ではなく、構造的な理由が存在します。
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役割が部門止まりで、部門横断の責任が設定されていない
ベトナム人リーダーの役割が「部署内の業務管理」に留まっている。 -
部門間調整の判断権限(Authority)が曖昧
“調整してよい範囲”や“最終判断ポイント”が設計されていないため、安全策として日本側へ戻す。 -
責任の所在(Responsibility)が不明確
部門間問題は「誰の責任範囲に入るか」が曖昧なため、日本人に集まりやすい。 -
調整スキル(Capability)が育つ機会がない
現場管理は強いが、部門横断リーダーシップを学ぶ研修や教育が不足している。
なお、ベトナムの組織文化としては、「上位者に判断を委ねる傾向」や「調和を重視し、衝突を避ける」行動特性があることが研究でも示されています(Tran, Q.H.N., 2019)。
※参考:https://www.researchgate.net/publication/335461048
これらが組み合わさることで、
部門をまたぐ課題 → 日本側に戻る構造
が自然とできあがります。
3. 教育や研修より前に必要なのは、部門横断も含めた“階層設計”
A社では、業務改善のために研修を何度か実施していましたが、部門横断課題が日本側に集まる構造には変化がありませんでした。
そこでまず行ったのが 階層設計の再定義 です。
具体的には、
・リーダー=部門内管理
・係長=“工程”の責任者
・主任(またはスーパーバイザー)=“部門横断”の調整と一次判断
というように、役割をより“横”に広げて設計し直しました。
さらに、判断権限を次のように明文化。
・部門横断の調整事項の一次判断は主任
・顧客要求の特例判断は係長(条件付きで権限付与)
・複数部門影響の納期調整は主任が窓口
・日本人マネージャーは最終承認のみ
これにより、部門横断課題が“すぐ日本側へ戻る”構造が次第に解消されていきました。
階層設計は「教育」「研修」よりも先に行うべき“組織のOSづくり”です。
4. 部門横断スキルを伸ばすための階層別研修
構造を整えたあと、A社では階層別研修を実施しました。
・スタッフ:ホウレンソウ、標準作業、基本的な報告精度
・リーダー:現場管理、優先順位、データに基づく判断
・主任/係長:部門横断コミュニケーション、調整術、問題解決
・マネージャー:承認判断、部門間の方針確定、戦略レベルの意思決定
特に “部門横断コミュニケーション”と“調整の型” を教える研修は効果が高く、
・主任クラスが自信をもって調整に入れるようになった
・日本側に戻る案件が明確に減少した
・部門間での“待ち時間”が短縮された
など、現地化が進んだ実感が現場から上がりました。
5. まとめ:日本人側に集中するのは“人の問題”ではなく“設計の問題”
ベトナム現場でよく見られる
「部門をまたぐ問題は日本人に戻る」
という現象は、ベトナム人の性格でも能力不足でもありません。
根本原因は、
・部門横断の役割設定が曖昧
・判断権限の線が引かれていない
・責任範囲が不明確
・調整スキルを育てる機会が不足している
という構造の問題です。
正しい順番は、
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階層設計(特に部門横断領域を含む)
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階層別研修(役割に応じた教育)
この2つを揃えることで、
・ベトナム人スタッフが自走し
・日本人マネージャーの負荷が軽減し
・部門間の意思決定スピードが向上し
・現地化(ローカライゼーション)が加速します。