ベトナム現地化コラム: ベトナム人スタッフはなぜ“上司を気にしすぎる”のか

11-30-2025

ベトナムの現場では「指示待ち」「上司の顔色を見る」「判断しない」といった行動が見られます。しかしこれは、本人の性格ではなく、文化 × 組織構造 が生み出す行動パターンです。


1.ベトナム社会に根づく“目上を立てる文化”

家庭・学校・社会の基盤として

  • 年長者への敬意

  • 指導者への服従
    が強調されてきたベトナムでは、職場でも自然と
    「上司が正解を持っている」
    という前提が形成されます。


2.上司が“最終決定者”として扱われる組織設計

日系製造業の多くでは、品質判断・顧客対応・納期調整・部門連携などが最終的に日本人管理者に集約します。
すると現地スタッフは

  • 判断しないほうが安全

  • 上司に確認したほうが確実
    と学習し、“依存型行動”が習慣化します。


3.評価制度が上司依存で、行動がゆがむ

ベトナムの多くの企業では、評価制度がまだ完全に体系化されていません。
そのため評価基準が曖昧で、
「成果」ではなく「上司からどう見られるか」
が行動の中心に置かれがちです。

これが「上司ウケ行動」を助長します。

(参考:JILPT研究レポート:日越企業比較分析)
出典:jil.go.jp


4. “失敗への恐怖” が挑戦を抑え込む

失敗に強いネガティブ反応を示す上司がいる環境では、スタッフは

  • 自分の判断 → 失敗 → 評価ダウン
    を避けるため、最初から判断しません。

「上司のOK」が心理的安全装置になる のです。


5.事例:階層別研修で“上司依存”を改善したベトナムの製造業のケース

ある日系製造業(公表事例、ベトナム HR コンサルティング会社レポート)では、上司依存が深刻化し、現場停滞が常態化していました。

そこで企業は以下の改革を実施しました:

  • 役割・判断基準の明確化

  • リーダー層向け階層別研修の実施

  • OJT トレーナー制度を導入し、任せる範囲を拡大

  • 日本人側の“任せ方”研修もセットで実施

その結果、

  • ベトナム人スタッフの改善提案数:月1件 → 月10件以上

  • 日本人への相談件数:40%減

  • 生産ラインでのボトルネックが大幅改善

となりました。

(出典:ベトナム HR Insights / SPACE A コンサルティング ケースレポート)


6.解決策は“上司依存構造”を壊す仕組み化

ベトナム人スタッフが上司を気にしすぎるのは
性格ではなく、構造がそうさせている からです。

改善には次の仕組みが必要です:

  1. 判断基準の明確化(何を・どこまで任せるか)

  2. 階層別研修で役割と期待行動を言語化

  3. 上司側の介入を減らす習慣化

  4. 評価制度の透明化

構造が変われば、スタッフは“上司”ではなく“目的”を見て動き始めます。


まとめ

ベトナム人スタッフの「上司依存」は個人の問題ではなく、文化・組織・評価・リスク設計の副産物です。
階層別研修と役割明確化を軸に設計し直すことで、組織は驚くほど自走し始めます。