ベトナム現地化経営コラム:ベトナム人管理職が育たない会社に共通する“ある欠落”

08-13-2025

1. 現地化の壁は「人が育たない」ことから始まる

ベトナム現地法人の現地化を進めようとするとき、多くの日系企業が直面するのが「ベトナム人管理職が育たない」という課題です。現場で真面目に働くスタッフは多く、与えられた業務をこなす姿勢は立派です。しかし、いざリーダーやマネージャーのポジションに就くと、判断力や主体性が不足しているように見えることがあります。その背景には、単なる能力不足ではなく、文化的要因と構造的要因が複雑に絡み合っています。

2. 「量」と「筋」の思考差が育成を妨げるメカニズム

文化的要因として、日本人とベトナム人の間にある「量」と「筋」の思考差が挙げられます。
日本人マネージャーは、成果を出すための筋道や正しい手順を重視します。「なぜそのやり方を選んだのか」「長期的に持続可能か」といったプロセスの正当性が評価基準になります。
一方、ベトナム人スタッフは「量」、すなわち目の前の課題に対して、とにかく早く解決するための対処療法的な対応を重視します。「与えられた課題をどう解決するかは任せてほしい、口出ししないでほしい」という姿勢で、手を動かすスピードと行動回数によって成果を狙います。これは田中信彦氏の『スッキリ中国論』でも紹介されている、中国的な問題解決アプローチと共通する発想で、まず現状を回すことに全力を注ぐやり方です。
この差を理解せずに「筋」だけを評価すると、ベトナム人からは「努力が評価されない」と映り、逆に「量」だけを見ると、日本人からは「効率が悪い」と映ります。この相互不満が、管理職の成長意欲を削ぎます。

3. 育たない理由は「設計不足」という構造的欠落

もう一つの要因は、現地スタッフを計画的に育成する仕組みが設計されていないことです。日本人駐在員は日々の数字管理、日本本社への報告、顧客対応、トラブル処理など“火消し”業務に追われがちです。その結果、部下が判断する前に自ら答えを出してしまい、業務を先に進めてしまうことが習慣化します。これでは部下に“育つ機会”が与えられません。育成とは意識的に機会を渡し、その結果を一緒に検証するプロセスを作ることです。

4. ズレを埋める3つの仕組み

この課題を乗り越えるには、

  1. ゴール共有:組織全体の目標と自部署の目標を明確につなげる。

  2. 思考の可視化:判断基準や意図を共有し、筋道を部下にも渡す。

  3. 振り返りの習慣化:量と筋の両方を評価する定期レビューを行う。

5. 現地化は「人が育つ構造づくり」

現地化とは、単に現地スタッフに任せることではなく、彼らが自ら考え、判断し、行動できるようになる“構造”をつくることです。量と筋、両方の視点を融合させたマネジメントを行うことで、駐在員不在でも事業が安定して回る組織が育ちます。これは短期的な売上管理以上に、長期的に会社の競争力を高める投資になるのです。