ベトナム現地化経営コラム :階層別研修の前にやるべきこと― ベトナム人マネージャー教育は“役割の言語化”から始まる ―

11-12-2025

1. そもそも「階層の定義」がされていない企業が多い

ベトナムで事業を展開する日系企業の多くが、「ベトナム人マネージャーを育てたい」と考えています。
しかし実際には、そのマネージャーという役割自体が明確に定義されていないことが多いのです。

経営者は「もっと考えて動いてほしい」と言い、
マネージャーは「何をどこまで決めていいのか分からない」と言う。
このズレを放置したまま階層別研修を始めても、
理念も数字も、現場では“自分ごと”になりません。

つまり、階層別研修の第一歩は「育成」ではなく「構造化」です。


2. 階層を定義するとは、「役割の言葉」を整えること

階層別研修は、単なるトレーニングの分類ではありません。
各階層における目的・責任・成果を明文化することから始まります。

多くのベトナム人マネージャー研修で成果が出にくいのは、
「理念」や「数字」の前に、そもそも“自分の役割範囲”が曖昧だからです。

次の表は、階層定義の例です。
縦軸に“階層”、横軸に“目的・主な役割・成果指標”を配置しています。


階層 目的 主な役割 成果指標
経営層 会社の方向性と理念を決める 理念を語り、方針を示す 経営目標の達成・理念の浸透度
マネージャー層 方針を戦略と数値目標に変換する 理念を数字で翻訳し、部門を動かす チーム成果・効率改善・KPI達成率
リーダー層 日々の業務を安定化・改善する 数字を行動に変え、メンバーを導く 生産性・品質・チーム協働
スタッフ層 与えられた業務を通して成果を出す 理念を行動で体現する 実務遂行・顧客満足・改善提案実行率

このように明文化することで、
各層が「自分の判断軸」を持ち、上からの理念や数字を正しく受け止められるようになります。


3. ベトナム人教育でまずやるべきは「役割定義ミーティング」

階層別研修を始める前に、ぜひ行いたいのが「階層定義ミーティング」です。

ここでは、経営層とマネージャー層が一緒に次のような問いを議論します。

  • あなたの階層では何を考える責任があるか

  • どの数字を自分の成果として持つのか

  • どの判断は上司に委ね、どこからは自分が決めるのか

このプロセスによって、
「任せる」と「責任を持つ」の境界が明確になります。
それが、ベトナム人マネージャー教育の土台になります。


4. 役割定義ができると、研修設計が一気に明確になる

階層が定義されると、
次に何を学ばせるべきか、どこに重点を置くべきかが自然に見えてきます。

たとえば、

  • 経営層には「理念と言語化」

  • マネージャー層には「数字と実行管理」

  • リーダー層には「チーム運営と改善」

  • スタッフ層には「基礎行動と報告の習慣化」

このように体系化された教育設計が、
「属人的なOJT」から「構造的な育成体系」へと進化させます。


5. 現地化経営は“役職”ではなく“役割”で動かす

ベトナム人社員の育成がうまく進まない会社ほど、
「役職」を与えることで満足してしまい、
「その役職が果たすべき役割」を明確にしていません。

現地化経営とは、肩書きの上下ではなく、機能の階層を整えることです。
階層を構造化し、役割を明確にし、
その上に理念と数字を乗せる。

それが、ベトナム人教育における“階層別研修の本質”です。