ベトナムで頻発するテト後の離職問題
「私の評価はこんなものじゃない、
もっと評価されてもいいはずです!
根拠をもっと明確にしてください!」
これは、ある企業の評価面談時のベトナム人女性からの発言です。
その後は退職してしまったとのことです。
企業における「社員の評価」はGM,マネージャーにとって、
非常に悩ましい課題の一つです。
なぜなら、どれだけ論理的に定量的に評価基準をまとめたとしても、
最終的には上司の主観的な評価が入らざるを得ないからです。
京セラの故・稲盛和夫名誉会長も、著書『経営のこころ』(PHP研究所)
の中でこう述べています。
「『人を評価するということぐらい難しいことはないのです。非常に難しく、やりにくいから、何かルールをつくって客観的な評価をする方法はないかと考える。そうすればトップである自分が悩まなくても、若い役員でも、また部課長でも決められます。しかしこれはやっても、すぐに矛盾が出てきてしまいます。だいたいそういうルールは何年も使えません。もし「ルールをつくってうまくいっています」という企業があれば、うまくいっているのではなく、うまくいっているように思っているだけです」。と。
ベトナム人社員の離職を防ぎ、成長を促す施策
冒頭の発言をしたベトナム人社員は会社としても
期待している若手社員であり、本来やめてほしくない人材でした。
しかし、会社として、本人の自己評価をそのまま
受け入れるわけにはいきません。
ただでさえ、ベトナム人の皆様は自己評価が高い傾向にあります。
本人も評価結果にきちんと納得し、その後の本人の成長につなげてもらうには、
どうすればいいのでしょうか?解決策の1つとなる取組が「1対1面談」です。
日本ではYahoo Japan!が先駆的に取り組み始め、
現在では日系大手企業を中心に定着しています。
その有効性から、ベトナムでも、取り組み始めている
企業が増えてきています。
実際に弊社のお客様もIT企業様、飲料メーカー様をはじめ、
1対1面談導入のお手伝いをさせていただいています。
ベトナムにおける1対1面談の効果
ではベトナムの日系企業で導入が始まっている1対1面談について、
各社は何を狙いとして、どんな効果を期待しているのでしょうか。
本コラムでは2点紹介します。
①自己評価と他者評価のギャップを本人に認識してもらう
1対1面談導企業は、少なくとも四半期の1回、
年に4回は上司と部下間で面談をします。
査定を含む評価面談は、年に1回のテト前に実施します。
その前に最低3回の面談を行います。
そうすることで、自己評価だけではなく、
他者評価(=上司評価)と、その間のギャップも
本人の知るところになります。
期首の早い段階で、このギャップを知ることで、
本人も評価結果を受け入れやすくなります。
更に、上司から何を期待されているかを知ることになるため、
その後の本人の成長にもつなげやすくなります。
②上司が部下を叱る場ではない。では何か?
これは、私が面談研修の企画時に気づいたことです。
それは、ベトナム人の皆様にとって通常、面談というと
「上司が部下に対して厳しくフィードバックをするもの」
というイメージを持っているということです。
そのため、事前に会社からのトレーニングがなく、
ただただ「面談をしましょう!」といって面談を始めると何が起きるか。
それは「上司がひたすら部下の改善点を指摘し続ける」面談になります。
そんな面談には、どんな部下でも参加したくありません。
むしろしないほうがよいです。
本当の狙いは上司側の「傾聴力」を鍛えることにあります。
傾聴とは、相手を否定せず、ひたすらに相手が言いたいことと、
その心を聞くことにあります。この「傾聴」という行為、
実はかなり難しいスキルです。特にベトナム人のデキる上司ほど、
部下の話は聞きたがらない傾向にあります。なぜなら、
「自分の方ができると思っている
=部下の話は聞くに値しないと思っている」
からです。しかし、弊社が面談研修の企画のために、
複数企業のベトナム人マネージャー、スタッフに
インタビューをさせていただいたところ、
できる上司ほど、部下が育っておらず、
いつまで経っても上司だけが忙しいという部署がほとんどでした。
反対に、プレーヤー時代はそれほど卓越した成果を上げていなかったとしても、
傾聴ができるマネージャーほど、その部署の成果は良い傾向がありました。
なぜなら、部下が頑張ってくれるからです。
以上2点が、ベトナムで1対1面談を実施する際の期待する効果になります。
「あなたが言うんだったら」という関係性の構築
以上が「社員の離職を防ぎ、本人の成長を促すための面談」
の実例になります。
これまで弊社は30社以上の企業様に
面談研修の企画、運営を担当させていただきました。
その上で、上司と部下間で面談を行うことによる
最大の効果は両者の「信頼関係」の構築に
尽きると考えています。
冒頭に、上司からの評価結果に納得できずに
辞めてしまったベトナム人社員の事例を紹介しました。
一方、会社の評価というのは、突き詰めると担当する
上司の主観的な評価が入らざるを得ません。
その中で、部下が心から納得し、成長をしてもらうには、
最終的には「(上司である)あなたが言うんだったら納得します」
と部下側が前向きに考えてもらえる関係を作れているか?
に尽きます。言うは易く行うは難し。
もし面談を会社の制度として取り入れたいと
お考えの方がいらっしゃいましたら、
更に詳しい事例を紹介しますので、
ご一報頂ければ幸いです。今回のコラムは以上です。
次回もよろしくお願いいたします。
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